通り雨

by まゆみ

黄昏どき、突然の激しい雨の木立の中、走り去るふたつの影が小さなハウスの中に吸い込まれるように消えていった。
「ちぇ、まいったな、、まったく、、」
「ああ、通り雨にしてはひどいな。おまえのトレーラーハウスが近くて助かったよ!」
任務を終え帰ろうとした二人に、突然激しく降り始めた雨は、たまたま近くにあったジョーのトレーラーハウスに健を立ち寄らせることになった。

「おい、シャワー先に浴びるぞ。おまえもこれで拭いとけよ。」
「ああ、サンキュー、」
ジョーは健にタオルを放り投げると、シャワールームの扉を閉めた。
健は投げられたタオルで、簡単に頭や身体を拭くと簡易な椅子に腰を下ろした。ザァー、ザァー、、聞こえてくるのはジョーが浴びてるシャワーの音か、それとも雨の音なのか、、
健は何気なく窓から外を見た。さっきまで黄昏どきだったのに、今はもう真っ暗で外は何も見えなかった。健は窓にかかったカーテンを閉めた。
ジョーが健の家に来ることはよくあるが健がここに来ることはあまりなかった。

トレーラーハウスの中は決して広くはないが、余分なものがないせいなのか、それとも割りと小奇麗に片付いてるせいなのか、そう狭さは感じなかった。
健は思わず自分の家の何日分か広げられて積み重ねられた新聞の下になってる 机や、同じく何日分かの脱ぎ捨てられた服の下になっているベッドを思いだして苦笑した。
ガチャリ、、ドアの開く音がしてバスローブを羽織ったジョーが出てきた。
「何をニヤニヤ笑ってるんだ?」
「ばか、おまえのハウスが以外に綺麗なんで感心してただけだよ。」
「はん!おまえのところが汚すぎるんだよ。」
「・・・・」
あまりの図星に健は返す言葉がなかった。無言でジョーを睨み付ける。

シャワーを浴びたばかりのジョーの身体は少し上気しているようだった。
バスローブから覗いた普段、日の光を浴びない部分の白い肌が幾分桜色に染まっ て見える。琥珀色の波打った髪はまだ水を含み幾筋かジョーの頬にかかる。
バスローブだけのジョーの姿は、いつもの彼より少し華奢に感じられた。無駄な肉のない彫刻のような身体・・背はジョーの方が幾分高いはずなのに体重は健とそう大差はなかった。俺には無駄な肉があるってことか・・・またしても健は苦笑せずには居られなかった。

「笑ってる暇があったら、さっさとシャワーを浴びて来い。風邪ひくぞ。」
ジョーは新しいバスタオルを健に手渡すために出した手を健に曳かれ、その反動で 健の身体に倒れかかった。健は素早くジョーの琥珀色の髪の間に指をからませジョーの頭を固定させると、ジョーの唇に自分の唇を押し当てた。唇を割りその奥にあるものを目指して進もうとする健にジョーのそれはしっかりと閉じられている。それでも諦めない健に抗い唇を離し 「・・は・な・・せ・・」 と言ったジョーのその時を待っていたかのように、健のそれはジョーに入り込んできた。
健はジョーの舌先を捕らえ絡めきつく吸った。逃げ出そうとする獲物を決して健は放そうとはしなかった。ジョーが永遠に続くかと思われるその行為に息苦しさを感じ始めたとき、漸く健は唇を離した。

「おまえ、、もしかして、、初めてなのか?、、」
「ば、、、」
立ち上がったジョーは持っていたバスタオルをおもいっきり健に投げつけた。
「野郎とするのは初めてだよ。」
「じゃあ、男とするのはこれがおまえのファーストキスってことか、、」
「け、健、 おまえ、、俺をからかってるのか?それとも一度殺されてぇのか?」
「ははは・・殺される前にシャワー、借りるよ。」
と、健はシャワールームの扉に手をかけたが、まだ何か言いたそうなジョーへ振り 向くと
「あっ、シャワーを浴びた後、熱いチャイが飲みたいな!」
「・・・あっ、ああ。わかった。」
戸惑いながらもそう答えてしまったジョーに健はウインクを残し扉を閉めた。

残されたジョーは冷蔵庫から牛乳を取り出し紅茶の葉を捜しながら
「くそぉ、もう二度とあいつをここに上げねぇからな・・」
と呟くのだった。   

 

 


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UTOLAND CHRONICLE / URA