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<6> 健は眠っていた。左の二の腕から静脈に挿入された留置針を通して点滴されている輸液に混入された沈静剤の作用で、深くはないがかといってはっきり覚醒することもない状態に置かれていた。この状態は人間の心身をもっともリラックスさせ、筋肉の疲労を取り去り、内的なストレスを緩和することは一般の治療においても周知の通りだ。また、両顳かみと左胸、他数カ所にごく小さな電極が装着され、数本のコードがそれらに繋がっている。 「さあ、先程の会話を分析してみよう。」 その頃、ジュンは南部の指示によりドーマニアの外国選手渉外部の担当官と面会していた。 夜明けまで健からの連絡を待ったジョーとジュンは、経緯を南部に報告した。 |
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<7> 「サブジェクトが持っていたIDをチェックしてみますか?」 「君、君、聞こえるかね?」 30%の覚醒状態は通常の睡眠におけるレム睡眠と同様、覚醒に近いものだが実際にはその逆であり、この時期に目を覚まさせることは非常に難しい。しかしこの状態でも話しかけたり質問したりすると無意識のうちに受け答えをする。深層心理にあることをそのまま話す場合が多いので、かつては真実を語らせるために強制的に不眠を強い、限界点でこうした状態を作り出すことが行われていた。 悪夢に追われるように苦悶の表情を浮かべた健は突然、叫び声をあげた。 |
<8> エア・ライフル競技が行われているアリーナは昼食のための休憩時間帯となり、閑散としていた。午前中の成績が集計され、掲示板に次々と表示されていくのを眺めているグループもあれば、早々とカフェテリアへと移動したグループもある。データー上はそれらしい過去の競技成績が連ねられているが、実際にはまったくの初参加のジョーだが、それでも南部の予想通りトップの成績で一次予選を通過していた。 接点が見えた。健はきっとそこにいる。俺達もそこに行かねば。 「サブジェクトが科学忍者隊だということを大統領に報告しないのですか?」 そして、彼は「実行」のコマンド・キーを押した。アイ・ウエアを通して健に送られるバーチャル・ビジョンは圧縮してあるので1分間に10回づつ繰り返される。情報処理心理学上、人の短期記憶は入力された情報を約20秒ほど留める機能しかもたない。ここで処理された情報を知識や記憶として長期保存させるには、容量の限界を超えさせることだ。 健は目覚めた。今度こそ、完全に。 |
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<9> (どこだ、ここは?) ジョーはじっと腕組みをしたまま、アリーナの外壁にもたれて立っていた。短気な彼にとって待つことは苦痛に近かったが、とにかく今はこうしているしかない。情報を収集したり、競技に集中している間はまだ良かった。だが二次予選はまた明日だ。気を揉みながら過ごす夜は長い。 その頃、南部は健のIDをチェックしてきたシュルツ教授の研究所についてのデーターを分析していたが、あのシュルツがこんな罠にかかるだろうか?と、半信半疑だったがー。
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<10> ― 「南部博士、そこにいるかね?」 (力を入れていたら苦しいのかしら?) 白い鳥と青い鳥は互いに距離を取ってじっと睨み合っている。 相手の出方を計るようにー。 ―
「こちら南部だ。G2号応答せよ!ジョー、健はどうした?」 |
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